環境表示ガイドライン改定~グリーンウォッシュを越え、よりよいコミュニケーションを実践するために~(第2回/全3回)

公開日 2026年10月19日
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環境表示ガイドライン改定を受けて

株式会社電通コーポレートワン 法務オフィス 法務室 法務1部

星 知矩

環境表示ガイドラインと景品表示法の関係

環境表示ガイドラインは、環境表示を行う事業者を対象に、自己宣言による適切な環境表示のあり方を示したものです。望ましい表示の考え方を示すガイドラインであり、法的拘束力はなく、違反しても、それ自体を理由に罰則が科されるものではありません。

一方、景品表示法は、商品・サービスの品質や内容について、実際よりも著しく優良であると誤認させる表示を禁止する法律です。違反した場合は行政処分などの対象となります。

両者の関係を整理すると、景品表示法上適法とされる範囲の内側に、環境表示ガイドラインが位置づけられるイメージです。つまり、ガイドラインに沿った表示を行っていれば、基本的には景品表示法上も適法と判断できると考えられます。言い換えれば、ガイドラインの遵守は景品表示法の遵守にもつながると言えるでしょう。

次に、環境表示ガイドラインと景品表示法を比較してみます。

対象者について見ると、ガイドラインは「主に自己宣言により環境表示を行う事業者・事業者団体」を対象としています。一方、景品表示法の対象は「商品・サービスを供給する事業者」です。

ここで注意したいのは、ガイドラインは文言上、媒体社や広告会社も対象に含まれると読める点です。そのため、環境表示の内容決定に関わる広告会社や代理店も、ガイドラインを意識する必要があると考えられます。

対象となる表示の範囲にも違いがあります。ガイドラインは、製品のライフサイクル各段階における環境配慮を説明する表示だけでなく、イメージ広告や企業姿勢の表明も対象に含みます。

一方、景品表示法は、顧客誘引を目的として、自社の商品・サービスの取引に関して行う表示が対象です。そのため、取引と直接結びつかない純粋なイメージ広告やIR資料は、原則として対象外とされています。

内容面では、ガイドラインは国際規格に基づき、①曖昧な主張を避ける、②説明文を付ける、③ライフサイクル全体を考慮する、④検証に必要なデータや評価方法にアクセスできるようにする、⑤比較主張は適切な評価や数値に基づく、といった考え方を示しています。

これに対し景品表示法は、著しく優良と誤認される表示、いわゆる実態と異なる表示を禁止しています。ガイドラインは、単に「嘘をつかない」だけでなく、より積極的で分かりやすい環境表示を求めていると見ることができます。

また、表示の根拠については、ガイドラインは検証に必要なデータや評価方法を提供できるようにし、消費者がそれらにアクセスできる状態にすることを求めています。

景品表示法も、表示内容が客観的に実証されていることを求めています。必要となる根拠の範囲は概ね共通していますが、ガイドラインはさらに「情報へアクセスできること」を求めている点が特徴と言えるでしょう。

環境表示に関する執行事例

違反した場合の影響についてです。

環境表示ガイドラインには罰則などの法的拘束力はありません。一方、景品表示法には措置命令や課徴金納付命令、確約手続、刑事罰などの執行手段があります。

環境表示についても、実際に景品表示法に基づく措置命令が行われています。

2022年には、カトラリーやストローなどを販売する事業者2社に対して措置命令が出されました。これらの事業者は、ウェブサイト上で「堆肥化可能な生分解性カトラリー」「約3か月で土に還る」などと表示し、水面に葉が浮かぶ画像とともに「環境に優しい」「海に還る生分解性」といった訴求をしていました。

これらの表示は、一般消費者に対し、使用後に廃棄しても約3か月で海に還るかのような印象を与えるものでした。しかし、事業者が提出した資料は、その表示を裏付ける合理的な根拠とは認められませんでした。

景品表示法では、実際の商品やサービスよりも著しく優良であると誤認させる表示が違反となります。カトラリーの場合、環境配慮によって使い勝手が向上するわけではありませんが、「優良」か否かは、一般消費者が実際のものよりも表示内容のものに惹かれるかという観点で判断されます。

消費者は環境に配慮した商品に好意的な傾向があるため、このような環境訴求も優良誤認表示に該当すると判断されました。

また、同日には、釣り用品やBB弾の販売事業者に対しても同様の措置命令が出されています。当時、グリーンウォッシュへの関心が高まっており、消費者庁もそうした動向を踏まえて執行したものと考えられます。

イメージ広告が適用対象であることの明確化と実務上の影響

今回の環境表示ガイドライン改定では、イメージ広告も適用対象となることが明確化されました。ここでは、その実務上の影響について考えてみたいと思います。

ガイドラインでは、環境表示について曖昧な表現を避け、説明文を付して具体的な内容を示すことが求められています。

例えば、ガイドラインで示されている「海洋環境の保全に取り組んでいます」という表示を考えてみましょう。ガイドラインの考え方に沿えば、「海洋ごみを回収し繊維製品としてリサイクルしている」「売上の10%を環境保全団体へ寄付している」といった具体的な説明を付すことが求められます。

しかし、このように説明を加えて具体化すると、その表示は単なるイメージ訴求ではなく、商品やサービスに関する客観的な主張となります。

その結果、本来は景品表示法の対象外と考えられていた企業姿勢の表明やイメージ広告についても、表示内容によっては景品表示法上の合理的な根拠が求められる可能性があります。

つまり、ガイドラインに従って表示を具体化すればするほど、景品表示法との関係も深くなります。両者を切り離して考えることは難しく、説明文を付けるのであれば、その内容を客観的なデータや資料で実証できるかを事前に確認しておくことが、実務上重要だと考えています。

まとめ:環境表示は「具体化」と「根拠」を一体として考える

環境表示では、「具体化」と「根拠」を一体で考えることが重要です。ポイントは3つあります。

第一に、「エコ」「環境に優しい」といった曖昧な表現を単独で使用せず、何がどのように環境に配慮しているのかを示す具体的な説明を併せて示すことです。

第二に、その具体的な表示について、景品表示法にも耐えうる合理的な根拠を事前に準備しておくことです。

第三に、環境表示ガイドラインの遵守と景品表示法への対応は表裏一体であると認識することです。

環境表示ガイドラインの改定により、今後、環境表示に対する関心やチェックが一層高まると予想されます。規制や運用が将来強化される可能性も踏まえ、法務・コンプライアンスの観点からも、ガイドラインに沿った環境表示を行うことが重要だと考えています。

環境表示コミュニケーション設計の進め方

駿河台大学 メディア情報学部客員教授

川名 周

環境表示コミュニケーション設計の進め方

環境表示コミュニケーションをどのように進めていくか。ここでは、制作プロセスやタッチポイントの観点からお話しします。

ポイントは、「具体化」と「根拠」を一体で考えることです。では、それを実務にどう落とし込めばよいのでしょうか。

私も監修に携わった『環境表示ガイドライン実践ガイドブック』(博報堂DYホールディングス)では、その考え方を整理しています。本日は、その内容も踏まえながらご紹介します。

まず、グリーンウォッシュとは何でしょうか。

一般的には、実態が伴っていないにもかかわらず、サステナビリティに配慮しているように見せたり、実態以上に環境に良いように見せたりすることを指します。また、不都合な事実には触れず、都合の良い部分だけを切り取って訴求することもグリーンウォッシュと捉えられています。

海外では実際に広告が問題視された事例もあります。例えば、英国の広告基準機関ASA(Advertising Standards Authority)は2023年、航空会社の広告に対して計4件の差し止めを行いました。

そのうちの一つでは、「未来を守る」というスローガンのもと、将来のカーボンニュートラルへの取り組みが訴求されていました。しかし一方で、航空機の運航そのものが大量のCO2を排出している事実には触れられておらず、あたかも現在も環境保全に大きく貢献しているかのような印象を与えるとして問題視されました。

こうした動向を踏まえ、環境表示ガイドラインでも参考情報として海外事例が数多く紹介されています。今後、日本企業のグローバル展開がさらに進む中では、国内だけでなく海外の考え方や規制動向も意識したコミュニケーションが求められていくでしょう。

5つのマインドセット

環境表示コミュニケーションを進める上で、大切にしたいマインドセットを5つご紹介します。

①「フェアプレー」から「ルール」へ

環境表示ガイドラインは13年ぶりに改定されました。法的拘束力を持つハードローではありませんが、環境省が示したガイドラインである以上、実務上はルールとして捉えるべきだと思います。罰則がないから守らなくてよい、というものではありません。

②世に出す前に準備しよう

ガイドラインでは、環境表示を行う前に確認すべきポイントが整理されています。情報発信の前にしっかり準備し、根拠や説明内容を確認した上で世の中に出していくことが大切です。

③完璧でなくても取り組みを真摯に伝えよう

環境配慮において100%完璧な状態を目指すことは容易ではありません。大切なのは、完璧であることよりも、自社の取り組みを誠実に伝えることだと思います。

④一方的に伝えるのではなく、対話しよう

企業が一方的にメッセージを発信するだけでなく、生活者との対話も重要になっています。SNSなどを通じたコミュニケーションの機会は今後さらに増えていくでしょう。そうした対話にも積極的にチャレンジしていくことが求められます。

⑤グリーンハッシングからグリーンシャウティングへ

グリーンハッシングもグリーンウォッシングも望ましい状態ではありません。そこで私たちは「グリーンシャウティング」という言葉を使っています。造語ですが、「正直に語る」という意味です。完璧でなくても構いません。萎縮するのではなく、真摯に取り組みを伝えていくことが大切だと思います。

タッチポイント別コミュニケーション

環境表示コミュニケーションを考える際、タッチポイントごとに留意すべき点があります。

対象となるのは、テレビCMや動画広告、新聞・雑誌広告、SNS、製品パッケージ、店頭POPやイベント、そしてオウンドメディアやサステナビリティレポートなどです。

『環境表示ガイドライン実践ガイドブック』では、「地球を救う」といった曖昧な表現を単独で使うのではなく、何をどのように改善したのかを具体的に示すことを推奨しています。例えば、どの環境課題に対して、削減なのか再生なのかといった内容を明確にすることが重要です。

また、映像や写真も暗示的な表示となります。景品表示法上も、文字だけでなく映像や音声を含めて判断されます。そのため、実態以上に環境配慮を印象付ける表現には注意が必要です。

広告にはスペースや時間の制約があります。テレビCMや動画広告ですべての説明を盛り込むことは難しいため、企業サイトや特設ページへの導線を用意し、根拠情報にアクセスできるようにしておくことが重要です。QRコードやリンクの活用は有効な手段だと思います。

新聞広告やグラフィック広告でも同様です。QRコードやURL、検索導線などを設け、表示内容と根拠情報が結び付くよう設計することが求められます。

根拠情報の掲載先としては、コーポレートサイトや特設ページのほか、サステナビリティレポートや統合報告書なども活用できます。

その際に重要なのが、景品表示法第7条第2項で求められる「合理的根拠」です。

一つは、客観的に実証された内容であること。もう一つは、表示内容と実証された事実が適切に対応していることです。

例えば、適切な調査によって得られたデータであっても、表示内容との結び付きが不適切であれば合理的根拠とは認められません。これは環境表示においても同様です。

SNSについては、反論や指摘を受ける可能性もあります。しかし、それを恐れて発信を控えるのではなく、現時点で何をどこまで実施しているのかを丁寧に伝えることが大切です。ここまでしかできていないから発信しない、という姿勢はグリーンハッシングにつながりかねません。

製品パッケージは表示スペースが限られるため、QRコードの活用が有効です。「エコ」「環境に優しい」といった曖昧な表現だけで終わらせず、再生材使用率など具体的な内容と根拠へのアクセス手段を示すことが重要です。

店頭POPやイベントでも考え方は同じです。環境に良いという訴求だけでなく、それが消費者にとってどのような価値につながるのかまで伝えられると、より良いコミュニケーションになります。

また、イベントで見せるパネルや映像・ショーの内容、そしてイベント名そのものも表示に当たります。「エコ○○展」「グリーン○○展」といった名称を用いる場合には、その根拠を説明できる状態にしておくことが必要です。

オウンドメディアやサステナビリティレポートでは、ライフサイクル全体の視点が特に重要になります。一部の取り組みだけを切り取るのではなく、全体像を踏まえて情報発信することが、グリーンウォッシュと見なされるリスクの低減につながります。

実施前に確認したい「5つの問い」

環境表示を行う前に、次の5つの問いを投げかけてみてください。

①  都合の悪い事実を隠していないか
②  その主張は数字や第三者認証で証明できるか
③  制約や課題も含めてフェアに伝えているか
④  見た目や演出が実態以上の印象を与えていないか
⑤  単発の施策ではなく、企業の戦略や取り組み全体の中に位置付けられているか

まとめ

環境コミュニケーションにおいて、完璧である必要はありません。大切なのは、自社の「現在地」を正しく伝えることです。
そのためには「何の領域で」「何を」「どの程度改善したのか」を具体的に示すこと。
そして、その根拠に誰でもたどり着けるよう設計しておくことです。

「具体的に伝えること」と「根拠にアクセスできること」。この2つを押さえることが、環境表示コミュニケーションの基本になると思います。

第3回は10月下旬掲載予定です。

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