そのデジタル広告は、本当にターゲットに届いている?AI時代に考慮すべき新指標

公開日 2026年09月01日
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株式会社Ads for Humanity 取締役COO

本村 勇人

2021年博報堂入社。営業として、男性シニア向け化粧品のブランド立ち上げをはじめとした市場創造に多数従事。2024年より新規事業推進組織「ミライデザイン事業ユニット」に参画し、AIエージェント時代の広告に関する新規事業・新サービスの開発を担当。Ads for Humanity共同設立メンバー。

デジタル広告はこれまで、誰に配信するかを制御し、その効果を測定できることを強みに、飛躍的な成長を続けてきました。しかし、AIエージェントの普及により、これまでのデジタル広告の前提となっていた配信と計測の仕組みが、根本から揺らぎ始めています。本稿では、AIエージェントの普及がもたらすデジタル広告の構造変化を整理したうえで、プランニングと効果検証に加えるべき指標について述べます。

AIエージェントの普及で、デジタル広告の構造はどう変わるのか

2025年、世界のWebトラフィックに占めるボットの割合は53%となり、人間によるトラフィックの47%を上回りました(注1)。

注目すべきは、割合だけではありません。従来のボットは、プログラムされた動作を機械的に繰り返すだけで、挙動のパターンが単調だったため、検知が可能でした。これに対して最新のAIエージェントは、文脈を理解したうえで、商品の比較検討から広告のクリック、フォーム入力に至るまでを、人間と区別のつかない形で自律的に実行します。加えて、かつてボットの構築には高度な専門知識を要しましたが、AIの民主化により、誰もが高度なエージェントを運用できるようになりました。

この変化は、デジタル広告に二つの課題をもたらします。

第一に、アドフラウドの被害拡大です。アドフラウドによる被害は、2023年時点で広告費の22%にあたる約13兆円と推計され、さらに2028年には約27兆円へと倍増すると予測されています(注2)。国内でも、2025年の被害額は約1,592億円と推計されています(注3)。人間と見分けのつかない高度なボットを誰もが容易に運用できるようになったことで、不正な広告接触の排除は一層難しくなっています。

第二に、配信精度の低下です。ボット・クローラーの増加は、広告を人間に届けることを難しくするだけでなく、行動データやクリックなどの効果データに、人間以外の反応を混入させます。人間とボット・クローラーが入り混じったデータは、生活者の実態を正確に表しません。
キャンペーンの結果を振り返る場面を、思い浮かべてみてください。CTR(クリック率)は想定を上回っているのにコンバージョンが伸びない、特定の配信面だけ数値が突出している、クリックは多いのに滞在時間が極端に短い。こうした食い違いに直面したとき、原因として検討されるのは、クリエイティブの訴求、ターゲティングの設定、遷移先ページの構成といった要素です。トラフィックの大半が人間であるという前提のもとでは、この切り分けは正しく機能してきました。

AIエージェントの普及は、その前提そのものを崩します。人間とボット・クローラーが混ざったままの数値をもとに判断を続ければ、成果につながっていない配信に予算を割き、本来伸ばすべき配信を止めるという誤りが起こりえます。これが、いま起きている構造の変化です。人間とボット・クローラーが混ざり合う環境では、配信対象者のうちどれだけが人間であったのかという割合を指標として取り入れ、両者を切り分けた運用を行っていくことが求められます。

求められるソリューションの進化:ブラックリスト型からホワイトリスト型へ

では、どうすれば人間とボット・クローラーを切り分けられるのでしょうか。

これまでの対策の主流は、ブラックリスト型のアプローチでした。ボットやクローラー特有の挙動を示すトラフィックや、そうしたトラフィックが集まりやすいメディアを検知し、配信対象から除外していく考え方です。しかし、AIエージェントの進化に伴い、AIエージェントと人間の区別は次第に難しくなってきています。

そこで必要になるのが、ユーザー単位のホワイトリスト型という考え方です。人間であることが証明されたユーザーにだけ広告を配信すれば、切り分けは配信の時点で完了します。

ホワイトリスト配信をどう実現するか

ホワイトリスト型配信を実現する方法の一つが、人間認証技術とブロックチェーン技術をかけ合わせて、人間だと証明されたユーザーにだけ広告を配信する「Human-Verified Ad」です。博報堂DYホールディングス傘下に2026年4月に設立された、AIエージェント時代の広告事業会社、株式会社Ads for Humanityが提供しています。

人間認証には、Tools for Humanity Corporationが提供するWorld IDを用いています。World IDは、氏名やメールアドレスなどの個人情報を一切共有することなく、オンライン上で自分が本物の、固有の人間であることを証明できる仕組みです。

配信実績の記録には、LG電子のブロックチェーン技術を用いています。すべての配信実績は改ざん不可能なエビデンスとして保存されるため、広告主は自社の広告が人間認証されたユーザーに配信されたことを、事後に検証できます。

この仕組みによって、前述した二つの課題に対応できます。人間だと証明されたユーザーにだけ配信することで、不正な広告接触によるアドフラウドの被害を抑制できます。あわせて、効果データに人間以外の反応が混入しないことから、配信精度の向上にもつながります。

2025年に広告主10社、3,500人を超えるユーザーを対象として実施した実証実験では、従来型のWeb広告と比較して、CTRが約10倍、直帰率が約15ポイント改善するという結果を確認しました(注4)。

人間認証によって、デジタル広告の価値を一層高めていく

AIエージェントによるトラフィックは、2025年に前年比約7,851%の増加を記録するなど、加速度的に増加しています(注5)。さらに、非人間トラフィックが今後5年以内に人間由来のトラフィックの最大1,000倍に達するという予測もあります(注6)。人間とボット・クローラーの切り分けへの対応は、喫緊の課題となっています。

そのような状況において、人間だと証明されたユーザーにだけ広告を配信する仕組みは、デジタル広告がこれまで積み上げてきた価値を維持し、その価値をさらに高めていくための土台になります。まずは、ご自身のデジタル配信における人間の割合に意識を向けていただくことが重要です。

この仕組みによるメリットは、広告主だけに限られるわけではありません。広告主にとっては、広告費が人間に届き、効果検証の精度が保たれることはもちろんです。媒体社にとっては、人間が接触したことを証明できる広告枠として、広告単価の向上に寄与する可能性があります。そして生活者にとっても、自分の好みに合った広告が届くようになり、無関係な広告に接する量が減ります。さらに生活者には、広告効果の向上によって削減された費用の一部が、広告を視聴したことへの対価として還元される余地もあります。このように、広告に関わるあらゆるステークホルダーにとって、より良い関係性を育む契機でもあります。

私たちはこうした、広告に関わるあらゆるステークホルダーのより良い関係性を目指し、人間認証型広告の取り組みを進めていきます。

(注1)Thales(Imperva)「2026 Bad Bot Report」
(注2)Juniper Research「Quantifying the Cost of Ad Fraud 2023-2028」(2023年9月)。円換算は1ドル159円で算出。
(注3)株式会社Spider Labs「アドフラウド調査レポート(通年版2026)」
(注4)博報堂DYホールディングス「AIエージェント時代の広告配信基盤を構築する新会社『株式会社Ads for Humanity』を設立」(2026年6月29日)」
(注5)HUMAN Security「2026 State of AI Traffic & Cyberthreat Benchmark Report」(2026年3月)
(注6)Cloudflare 2026年第2四半期決算説明会におけるMatthew Prince CEOの発言

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