株式会社SUBARU IT戦略本部 ITインフラ部 Webガバナンスグループ 主査
荒木 孝充
数社のスタートアップ企業を経験後、SUBARUグループ企業にてWeb制作事業を立ち上げ。2020年よりSUBARU IT戦略本部にてWebガバナンス強化活動を開始。セキュリティや法規対応などのリスクマネジメントからグループ各社各部門のWeb担当者の支援まで、Webサイトの運用を中心にグループ全体でのWebガバナンスを強化するとともに、それらWeb資産の最適化と有効活用の促進に取り組んでいる。
株式会社リコー コミュケーション戦略センター ブランド戦略室 ブランディンググループ
菱沼 大輔
セールスからリコーでのキャリアをスタートし、飛び込み営業から大型ITシステム案件を経験後、コミュニケーション部門に異動し、ブランディング、Web、広報に従事。途中、新規事業開発、東北の復興支援、ロンドン駐在など、社内で別部門に中抜け。2021年から再びWebを担当し、グローバルガバナンス、デジタル戦略、Webアクセシビリティなどを推進。最近の関心事はドメインネームの最適化。
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 ブランドコミュニケーション本部 デジタルコミュニケーション企画部 企画グループ
高橋 啓介
中小企業数社でデジタルマーケティングやECサイトの運営を担当した後、現職のキヤノンマーケティングジャパンに入社。企業情報サイトのWebマネジメントや企画・制作を通じて、コーポレートブランディングの推進に取り組んでいる。CMPツールの導入をはじめ、サイト内検索ツールの運用・管理など、SaaSツールを活用したUI・UXの改善にも力を入れている。
モデレーター
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 ブランドコミュニケーション本部 コミュニケーション推進部 部長
1968年東京生まれ。1992年早稲田大学 政治経済学部卒。同年日立製作所入社。国内・海外の宣伝、展示会、ブランド戦略等を担当。2004年から日立グループ約1,000社のWeb戦略を統括し、コーポレートサイトやソーシャルメディア運用、デジタルマーケティング、Web業務に関する社内外講師などを務める。2017年9月、大日本印刷入社。ブランド戦略、Webマネジメント、企業宣伝などを担当。2019年11月、キヤノンマーケティングジャパン入社。キヤノンのポータルcanon.jpの運営を中心に、コミュニケーション、ブランド戦略全般に携わる。
【パネルディスカッション】日本企業のCookie同意ツール導入の実際
Cookie同意ツールの導入のきっかけと目的
改正個人情報保護法がきっかけで検討を始めました。ただ、実際にはブランディングの意味合いのほうが大きいと感じています。現在はブランドサイト、製品サイト、中古車サイト、コーポレートサイトにCMPツールを導入しています。
ヨーロッパ駐在時には現地メンバーがGDPR対応で導入準備をしていましたが、帰国直後は日本での導入は必須ではないと判断して一度ペンディングにしました。その後、多くの企業が「個人情報取得についてお客様が選べる」という企業の姿勢を示すためにCMPを導入していると勉強会で知り、導入を決めました。現在はコーポレートサイトとグローバルサイトで導入しています。
法改正がきっかけではありますが、法対応というより企業の信頼性を示す取り組みと考えています。個人情報を適切に扱っていることを示すために、まずはコーポレートサイトに導入し、検証を進めています。
ツールの比較検討をしたか?(方式の話)
CMPには大きく「クッキーの発火を制御する方式」と「通信を制御する方式」の2種類があります。クッキー制御型は、ユーザーが許可したサービスだけタグが発火し、アクセス解析などが実行されます。通信制御型は、許可されていないサービスへの通信そのものを遮断する仕組みです。ただし通信制御の場合、事前に許可設定していない通信はすべて止まるため、サイトの機能に影響が出る可能性があります。クッキー制御型にも手動設定とオートブロッキングがあり、運用方法によって挙動が変わります。
導入前に説明は聞いていましたが、実際にやってみると想像以上に複雑でした。クッキーをオン・オフするだけの仕組みだと思っていたのに、設定や検証にかなり手間がかかりました。ベンダーに依頼すればコストがかかりますし、慣れていないと設定ミスも起きやすいと感じました。通信制御型についても検討していますが、知らない通信まで止めてしまうリスクがあり慎重に見ています。サイトの裏側では、ドメイン管理者が把握していない通信が動いていることもあり、洗い出しが必要になります。
弊社は通信制御型ではなく、オートブロック機能のあるクッキー制御型を採用しています。ただ、自動ブロックが想定以上に働き、表示されるはずの画像が表示されないなど運用に苦労しました。
西田
タグや通信の管理は、どこかの部門が責任を持って把握しておかないとサイトの挙動が分からなくなりますよね。特に企業サイトでは、IT部門などがタグ管理を統括する体制が重要になります。
クッキー制御の場合は、どのクッキーが動いているのかを把握しておくことが前提になります。通信制御の場合も同様で、どんな通信が発生しているのか理解しておく必要があります。サイト構成や体制によって、どちらの方式が合うかは企業ごとに異なると思います。外部サービスのクッキーは、さらに別のクッキーが発火するなどツリー構造で広がる場合もあります。通信制御型はその後ろの通信も遮断できるため、セキュリティ面で優位性があると説明するベンダーも多いです。
クッキーを出していなくても、知らないところに通信が行く可能性があるのは少し怖いですね。その意味では、セキュリティ視点で通信を制御する考え方も一つの選択肢だと思います。
例えばウェブフォントでも外部通信が発生します。何を許可し、何を止めるのかの設計が重要になります。
GTMについて(タグの入れ方、整理の仕方など)
西田
タグを追加するときは、どの部署が管理していますか。どういう担当者が対応しているケースが多いのでしょうか。
タグ設定はIT部門のデジタルマーケティング担当が管理しています。ただタグが増えすぎたり、担当者の異動もあり、メンテナンスが難しくなっています。
西田
キヤノンマーケティングジャパンの場合、タグ管理はIT部門で、高橋さんはウェブ部門という形で役割が分かれているのですね。
弊社では、 IT部門の人がタグ管理も担当しています。タグの追加はその担当者が対応することもありますし、外部ベンダーに依頼する場合もあります。CMPへのクッキー登録はベンダーにお願いしています。
タグを入れる作業自体はそれほど大変ではありません。ただ、その後の管理や設定を維持する体制づくりの方が難しいと感じています。
西田
コンバージョン計測などもあるので、特に広告では代理店と「どのタグが必要か」「設定が正しいか」を確認する必要がありますね。
不明Cookieが大量発生する問題と対応方法
最初はクッキーが200ほど検出され、その中に10〜20ほどの不明クッキーがありました。ベンダーでも分からず、IT部門に相談しました。調べるとCMSが発行するクッキーだと分かり、分類できました。ただスキャンするたびに新しいクッキーが見つかり、対応が大変でした。ウェブ上で検索すると「調査中」とされているクッキーも多く、このままだと管理できていない状態が見えてしまうので、徹底的に調べて分類しました。AIで調べると、どの会社が発行したクッキーで、どんな目的なのかも分かるようになり、かなり正確に整理できました。
社内ではクッキーを誰が担当するのか明確ではなく、「この部署がやっているのでは」という曖昧な状態でした。IT部門に聞いても「見たことがない」「分からない」と言われてしまい、結局関係部門で協力して調べるしかありませんでした。
西田
ツールベンダーに聞くと、何かヒントはもらえるのでしょうか。
正直、ベンダーもほとんど分からず、自分たちで調べるしかないケースが多かったです。
広告関連のクッキーなら、代理店に「発行しているクッキーを教えてください」と依頼して、一つずつ確認していきます。
CMSが発行しているクッキーは、ベンダーでも分からないケースがありました。
西田
IT部門や情報システム担当者が詳しいのではないでしょうか。
私はIT部門ですが、分かるのは自分が関わっている範囲だけです。IT部門でもこの領域は知らない人が多いですね。
西田
ウェブ部門なのか、ITなのか、情報システムなのか、デジタルマーケティングなのか。担当範囲が曖昧なのも課題ですね。
部署が分かれると、ページ制作とデータ取得が別になり、目的の共有が難しくなることがあります。連携の課題を感じています。
ITの知識というより、ウェブ特有の世界なので、どの部署がやっても難しさはあると思います。
社内の情報システムはイントラの技術には詳しいですが、外部ウェブの仕組みは別の領域で、詳しい人員は限られますね。
西田
ウェブに詳しいIT人材が不足している、というのは多くの企業で共通の課題かもしれません。
第2部後編は5月中旬アップ予定です。