【第13回Webグランプリ受賞作品紹介】プロモーションサイト賞グランプリ|百様図 株式会社大丸松坂屋百貨店

公開日 2026年05月18日
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株式会社大丸松坂屋百貨店 ブランディング戦略室

百田 光里

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2025年夏、当社はVI(Visual Identity)を策定しました。これを「百様図(ひゃくようず)」と名付けています。
ブランディング戦略室の立ち上げから約4年。企業としてどうありたいか、2〜3年の歳月をかけてようやく形になり、社外にも発信できる状態となったのが、この百様図です。

大丸松坂屋百貨店、現状と課題

大丸松坂百貨店は、歴史のある2つの百貨店が統合して誕生しました。松坂屋は名古屋を中心に発展し、その起源は1611年、伊藤屋にさかのぼります。一方、大丸は1717年に京都・伏見で創業した呉服店をルーツとしています。
両者が統合し、「大丸松坂屋百貨店」として新たにスタートしたのは2010年です。本店を持たず、札幌から福岡まで全国に15店舗を展開しています。それぞれの店舗は地域に根ざし、独自の個性やブランドイメージを築いてきました。

こうした背景から、統合後もコーポレート全体としての見え方や一貫したブランド像については、必ずしも十分に議論されてきたとは言えませんでした。大丸・松坂屋それぞれの屋号が地域で強く認知されていたこともあり、各店舗が主体となってブランディングを行ってきたためです。
しかし、時代の変化とともに課題が顕在化しています。小売業界、とりわけ百貨店業界では競争が激化し、同質化・コモディティ化が進行しています。その中で、「他社と何が違うのか」「どのような存在でありたいのか」といった企業としての存在意義が、これまで以上に問われるようになっています。

さらに、全国15店舗それぞれの見え方やイメージが大きく異なる中で、それらを一つの方向性で束ねるべきなのか、あるいは束ねることが可能なのかという点も、大きな課題として浮かび上がっています。仮に共通の軸を持つとするならば、「大丸松坂屋百貨店」としての“らしさ”とは何か——その問いに向き合う必要がありました。

気づき

こうした課題意識を背景に、ブランディング戦略室の取り組みはスタートしました。「自分たちは何者なのか」という問いに向き合い、その答えを探すところからの出発でした。全国の店舗を訪れ、現場へのインタビューを重ねながら、外部パートナーとともに自分たちの本質を探っていきました。

その過程で、大きく3つの気づきがありました。

1つ目は、見た目や印象のばらつきは表層的な問題であり、本質ではないということです。真の課題は目に見えない部分にありました。自分たちがどのような存在で、何を目指すのかという内面の軸が不安定で共有されていなかったために、結果として外側の表現もばらばらになっていたのです。

2つ目は、「ばらばらであること」をネガティブに捉えるのではなく、価値として再定義できるのではないかという視点です。本店を持たず、各地に根ざした店舗がそれぞれの個性を持つことは、中央集権的ではない商いのあり方そのものです。地域のお客様や取引先と深く関わる中で育まれてきた多様性は、むしろ現代において強みになり得ると捉え直しました。

3つ目は、多様でありながらも、共通して大切にしている価値観が存在するという気づきです。

それらは次の4つの視点として整理されました。

・気持ちへのまなざし(お客様への心配りや礼節)
・うつろいへのまなざし(時代の空気感や瞬間の美しさへの感度)
・土着へのまなざし(地域の文化やコミュニティとのつながり)
・歴史へのまなざし(伝統や積み重ねへの敬意)

これらが、私たち「大丸松坂屋百貨店らしさ」を形づくる核であると定義しました。
この4つの価値観にたどり着くまでには、約1年半を要しました。
しかし、これらの概念をそのまま言葉だけで伝えることには難しさもあります。そこで、言語化だけでなく視覚的に共有する手段として、VI(Visual Identity)を開発しました。ビジュアルの力を通じて、従業員やお客様を含む多くの人に直感的に伝えていくことを目指しています。

策定したVIは、ショッピングバッグや公式サイトなどに展開しています。百貨店におけるショッピングバッグは、屋号を象徴する存在であり、同時に強い発信力を持つメディアでもあります。お客様にとっての印象づけはもちろん、従業員にとっても自分たちのあり方を体現する象徴として機能しています。
こうした取り組みを起点に、ブランディング活動を本格的に進めていきました。

Visual Identity 百葉図

Visual Identity百葉図は日本デザインセンター 三澤デザイン研究室 デザイナー 三澤遥さんに依頼し、1年ほどかけて制作しました。

左側(みどり)が大丸、右側(あお)が松坂屋という位置づけです。これまでのマークから丸と四角を抽出しています。松坂屋の菱形の部分を私たちは井桁(いげた)と呼んでいます。
これをオマージュして丸と四角を設定しました。カラーは、メインカラーとキーカラー、サブカラーとベースカラーの4色です。
最大の特徴は、実際の紙を丸と四角にくり抜いて、それを重ねてできたビジュアルであることです。

Photo by Gottingham

一枚のベースとなる紙の上に、穴の開いた丸や四角の紙を5枚重ね、1億画素のカメラで撮影することで、1枚の「百様図」を表現しています。紙の重なりによって生まれる質感や奥行き、影の揺らぎが感じられる点が特徴です。
このビジュアルを反映したショッピングバッグも、2025年夏に誕生しました。

プロモーションの全体構成

プロモーションでは、新聞、特設サイト、お取引先様を中心に直接お渡しする手紙をはじめ、CMやSNSを含む動画、店頭サイネージ、ポスター、店舗周辺の駅サイネージなど、複数の媒体を活用しました。各エリアで特性や顧客層が異なることを踏まえ、一律の展開ではなく、それぞれの店舗や地域において最も効果が発揮される手法を選定しています。

梅田駅(大阪)では、夏の1週間にわたり、大型ビジュアルを掲出しました。加えて、各種媒体を通じて2025年8月の約1か月間、集中的に露出を展開しました。
プロモーション全体における百様図サイトの役割は、新しいショッピングバッグに込められた「百様」という考え方を、各媒体で接触した後に能動的に訪れた人へ、丁寧に伝える場とすることでした。ウェブサイトの制作は株式会社マウント、全体のディレクションおよびデザインは株式会社日本デザインセンター三澤デザイン研究室が担当しています。

本サイトの制作にあたり、特に重要視した点は大きく2つあります。

1つは、誰もが百様図の考え方を“体感”できることです。紙の質感や重なり、音といった要素まで感じられるような表現を取り入れ、単なる閲覧にとどまらない体験型のサイトを目指しました。
もう1つは、従業員にとって自分たちの存在意義を確認できる場とすることです。これまで、そのような役割を持つ場は多くありませんでした。
百様の意義を理解し、日々の判断軸として立ち返ることができる——迷ったときに戻ってこられる拠り所となるようなサイトにしたいと考え、この2点を軸に設計しました。

サイト全体は、紙の質感や重なりを感じられるような表現にこだわりました。紙が重なっていく様子が無限に続いていきます。あまり説明は入れず、感じるつくりになっています。スクロールを進めていくと、最終的に百様図の全体像が現れ、さらに引いた視点でショッピングバッグへとつながっていきます。ここまでが一連の体験の流れです。
また、各所に配置したモーダルを通じて、百様図に込めた思想や背景を補足しています。直感的な体験と理解の両立を図る構成としました。

大切にしている4つの価値観についても、それぞれの意味や背景を丁寧に整理しています。たとえば、「歴史へのまなざし」とは何か、「本店のない百貨店」であることが意味する土着性とは何か。また、「うつろい」や「気持ち」といった視点において、何を大切にしているのかを具体的に伝えています。

その理解を深めた先に、大きく刷新されたショッピングバッグの説明へと続く構成としています。

サイト内は何度でも行き来できる設計とし、訪れるたびに色が変化する仕掛けを取り入れました。繰り返し訪れても常に新しい印象を得られる体験を提供しています。

公開後の反応や審査コメント

本サイトに対しては、さまざまな反響が寄せられています。
中でも嬉しかったのは、従業員からの声です。多くの従業員から「百様」という思想に触れることで、自分たちの存在意義が明確になった、自身の業務の支えや土台になるといった声がありました。インナーブランディングの観点でも、大きな手応えを感じています

また、お客様からも、新しいショッピングバッグの展開を通じて「何かが変わりそう」「新しくなっていきそう」といった前向きな反応が寄せられました。ビジュアルの変化が、企業の印象そのものの変化として受け取られていることがうかがえます。

ただ、ビジュアル思想を打ち出しただけで完結するものではないとも考えています。今後は「土着」という視点をより深め、地域に対してどのような価値を提供できるのかを問い続けていく必要があります。百様の思想を実際の取り組みとして体現できる企業へ——その実現に向けた歩みを続けていきます。

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