【雑誌メディア専門委員会セミナー】出稿ROIの可視化を目指す、出版社Webメディアの取り組みについて~前編~

公開日 2026年07月01日
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「Webタイアップ広告投資効果の可視化」の必要性について

株式会社博報堂 新聞雑誌局 雑誌メディア統括

前川 雅子

私は長年、広告会社で雑誌広告ビジネスに携わってきました。出版社が生み出す質の高いコンテンツや圧倒的な編集力、そして何より読者との深いエンゲージメントによって育まれる熱量には、今なお驚かされることがあります。雑誌メディアの価値に深いリスペクトを抱きながら、日々業務に向き合っています。
そして今、雑誌メディアが持つ力は紙という枠を超え、デジタル領域へと大きく広がりを見せています。

こちらは、日本のマス四媒体由来のデジタル広告市場規模の推移を示したグラフです。
雑誌デジタルは、他メディアに先駆けて市場を拡大してきました。2024年にはテレビデジタルに首位の座を譲ったものの、テレビデジタルがTVerを中心に急速な成長を続ける現在においても、マス四媒体由来のデジタル広告市場の大半はテレビデジタルと雑誌デジタルが占めています。
雑誌メディアは、紙で培ってきたコンテンツ力や読者との強固な関係性を強みに、デジタル領域でも存在感を発揮し続けているのです。

さらに注目したいのは、出版社の広告収入に占めるデジタルの割合です。出版社では広告収入の35%をデジタルが占めており、他のマス媒体と比べても圧倒的に高い水準にあります。また、インターネット広告市場全体に目を向けると、出版社をはじめとするメディア由来のデジタル広告市場は、リテール広告の中心であるECプラットフォーム市場と肩を並べる規模に成長しています。さらに、約5,000億円規模を誇るインターネット制作市場においても、出版社が培ってきた高いコンテンツ制作力や編集力を活かせる余地は大きいと考えられます。
こうした状況を踏まえると、出版社におけるデジタルコンテンツビジネスは、すでに一定の存在感を確立しているだけでなく、今後さらなる成長が期待できる領域だと言えるでしょう。

一方で、広告主の皆様からは「コンテンツの質が高いことは理解しているが、デジタルにおけるROIをどのように評価すればよいのか」という声をいただく機会も増えてきました。
これほど大きな可能性を持つ領域だからこそ、私たち雑誌広告協会では、この課題の解決に向けて協会を挙げて二つのプロジェクトを推進しています。
目指しているのは、質の高さだけでなく、ROIまで説明できるメディアへの進化です。雑誌メディアが持つ価値をより明確に伝えるため、質と量の両面から効果の可視化に挑戦し続けています。

左側が、アスキング調査によって広告効果の可視化を目指す「M-VALUE DIGITAL」です。パネル調査を活用することで、PVやUUといったアクセスログだけでは捉えきれない、ブランド好意度や自分ゴト化、購入意向の変化といったミッドファネルの効果を測定します。あわせて、出版社メディアならではの高い専門性や読者との強いエンゲージメントについても、データに基づいて可視化・検証していきます。
一方、右側はアクセスログの解析によって広告効果の可視化を目指す「タイアップレポート」です。これまで出版社ごとに異なっていたレポーティング指標について、現在は33社が足並みを揃え、GA4ベースでの標準化を実現しています。
さらに、その先の取り組みとして、メディアや広告商品のジャンル別平均との比較や、「どれだけ読まれたか」だけでなく「どのように読まれたか」まで評価できるスコアシートの開発も進めています。広告主の皆様がより客観的に効果を判断できる環境づくりに挑戦しているのです。

アスキング調査による媒体価値・ミッドファネル効果の可視化―M-VALUE DIGITALの取り組み―

株式会社マガジンハウス

間瀬 英之

株式会社ビデオリサーチ

中山 不尽子

広告効果の測定は、業界全体の課題として以前から取り組んできたテーマです。雑誌広告協会では、紙の雑誌広告を対象とした調査「M-VALUE」を2013年に開始し、2019年まで計6回にわたり調査と結果の公表を続けてきました。
その後、デジタル広告市場の急速な拡大を受けて、調査対象をウェブタイアップ広告へと移行。「M-VALUE DIGITAL」としてアップデートし、2022年に第1回調査、2024~2025年に第2回調査を実施しました。

広告接触から購入、さらにはファン化へと至るファネルの中で、特に重要なのが購入直前の興味関心や購入意向といったミッドファネルの変化です。こうした効果を調査し、可視化することが求められています。

【M-VALUE DIGITAL】調査手法

主要広告主のデジタルキャンペーンを対象に、媒体社制作コンテンツ(タイアップ広告)の効果を横断的に測定。他の企画広告の平均値と比較することで、各メディアの強みや優位性を検証します。

広告主はさまざまな手法でデジタル広告を展開していますが、今回の調査では出版社サイト、専門系サイト、その他サイトに掲載されたタイアップ広告を対象としました。
調査にあたっては、インターネット調査パネルの中から各メディアを月1回以上閲覧しているユーザーを抽出し、アスキング調査を実施しています。

「一般Webメディア」とは、出版社以外が運営するバーティカルメディアやニュースポータル、Web専業メディアを指します。一方、「出版社Webメディア」は、出版社が発行する雑誌を起点としたWebメディアです。

【M-VALUE DIGITAL】調査概要

本調査では、出版社以外が運営するWebメディアを「一般Webメディア」と定義しています。出版社Webメディアと一般Webメディアの双方を対象に広告効果を測定し、その違いを比較・検証する仕組みです。

調査対象は、一般Webメディアが64素材、出版社Webメディアが36素材です。参加媒体数は、一般Webメディアが17媒体、出版社Webメディアが22媒体となっています。また、調査データは2022年10月から収集を開始し、最新では2025年5月までのデータを蓄積しています。

対象者は、一般Webメディアが20~59歳、出版社Webメディアは媒体特性に応じて20歳以上としています。ただし、平均年齢はいずれも40代前半で大きな差はなく、比較可能な条件となっています。
注目いただきたいのは有効サンプル数です。一般Webメディアは25,600サンプル、出版社Webメディアも11,000サンプルを確保しており、安定したデータに基づく検証が可能です。
設問数は両者とも約20問で統一しています。認知や興味・関心といったファネル指標に加え、広告接触による態度変容やサイト閲覧理由も取得し、広告効果を多面的に評価できる設計です。
本調査の特徴は、広告投資効果(ROI)の最大化に向けて、読者のインサイトと態度変容を可視化している点にあります。認知や好意度の測定にとどまらず、「なぜ効いたのか」「どのような行動につながるのか」まで一貫して捉えています。

具体的には、左側に示した5つのレイヤーでデータを取得しています。

1つ目は「認知・接点」です。
どの媒体が、どのようなペルソナにリーチしているのかを把握し、媒体特性や読者層を明らかにします。

2つ目は「広告・ブランド評価」です。
広告への好意度や商品への興味・理解度に加え、どのような要素が興味喚起につながったのか、クリエイティブ評価も取得しています。

3つ目は「心理態度変容」です。
広告接触によってどの程度自分ゴト化が進み、心理的な変化が生まれたのかを捉えます。

4つ目は「行動・意向」です。
利用・購買意向やその時期まで含め、実際の行動にどれだけ近づいたのかを把握します。

5つ目は「属性分析」です。
性別や年齢だけでなく、収入や職業も踏まえ、どのターゲットに効果があったのかを分析します。

これらのデータは、戦略設計やクリエイティブ改善、媒体選定の精緻化など、データドリブンな改善アクションに活用できます。

その結果として期待されるのが、CPAの低減、LTVの向上、そして予算配分の最適化です。どの要素が効果につながったのかを明確にすることで広告効率の改善を図るとともに、自分ゴト化されたユーザーの育成によるファン化やリピート促進にも寄与します。さらに、ペルソナと媒体価値の両面から最適なメディアミックスを構築し、より効率的な出稿判断を可能にします。

こちらが調査対象となった出版社Webメディア36素材の一覧です。広告素材は合計100素材で、コスメ・美容を中心に、家電、飲料、ファッション、旅行など幅広いカテゴリーをカバーしています。中でもコスメ・美容が31素材と最も多く、家電や飲料など日常接触頻度の高いカテゴリーも含まれています。

対象メディアは主要出版社を中心とした22媒体です。雑誌ブランドを基盤とする多様なメディアを対象としており、幅広い読者層をカバーしています。また、出版社Webメディアと一般Webメディアを同一条件で比較できる点も、M-VALUE DIGITALの特徴です。

このように、素材・メディアともにバランスよく設計することで、特定のカテゴリーに偏らない汎用性の高い分析を実現しています。

ミッドファネル効果の検証結果

具体的にどのような効果が確認されたのでしょうか。ここからは、ミッドファネル効果の検証結果についてご紹介します。

出版社Webメディアは、一般Webメディアと比較してほぼすべての指標で高いスコアを示しました。特に差が大きかったのは、商品・ブランド認知や検索意向、利用・購入意向といった、態度形成から行動に近い指標です。

商品・ブランド認知は82%と平均を5ポイント上回っており、広告接触前からブランドが広く認知されていることがうかがえます。目指しているのは、質の高さだけでなく、ROIまで説明できるメディアへの進化です。また、検索意向は78.4%で平均比+5ポイント、利用・購入意向も82%で+4ポイントと、実際の行動につながる指標において明確なリフトが確認されました。

さらに、好感度や興味・関心、内容理解についてもすべて平均を上回っており、単にリーチするだけでなく、深い理解や共感を生み出している点も特徴です。自分ゴト化は87.3%と非常に高い水準で、広告が単なる情報ではなく、自分に関係のあるものとして受け止められていることが分かります。

これらの結果から、出版社Webメディアは認知から興味・理解、そして行動意向まで一貫して高い成果を示しており、ミッドファネルに強みを持つメディアであると捉えています。

購買意向について見ると、出版社Webメディアの閲読者は、全ジャンルで次回購入意向が概ね50%前後と高い水準を示しており、一般Webメディアの平均を大きく上回っています。これは昨年度公表した調査結果でも確認された傾向です。

最も高かったのは男性ファッションで57.4%、次いでコスメ・美容が50.4%、家電が約50%、アルコール飲料も48%と高いスコアとなりました。
注目すべきなのは、「次に購入する時」「買い替える時に選ばれるか」という、実際の購買行動に近い意識を捉えられている点です。出版社Webメディアのタイアップ記事は、認知向上にとどまらず、具体的な購買行動につながるレベルまで態度形成に寄与していることがうかがえます。

では、購入意向が高いミッドファネルにはどのような特徴があるのでしょうか。ここからは、男性ファッションとコスメ・美容を例に見ていきます。

まず男性ファッション領域を見ると、出版社Webメディアの評価前認知は92.1%と、一般Webメディア平均を15ポイント上回る非常に高い水準となっています。媒体とテーマの親和性が高く、関心の強い読者が集まっていることがうかがえます。さらに特徴的なのは、認知だけでなく、その後の指標も一貫して高いことです。検索意向は平均比で10ポイント高く、購入・利用意向も6ポイント上回っています。つまり、「気になる」「調べる」だけでなく、「買いたい」という行動意向までしっかりつながっていることが分かります。
続いてコスメ・美容領域を見ても、同様に非常に高いスコアが確認されています。出版社Webメディアは、関心の高い読者との接点を活かしながら、認知から行動意向まで効果的に態度形成を促していることがうかがえます。

では、なぜ出版社Webメディアでは行動意向が高まるのでしょうか。調査結果からは、大きく3つの要因が見えてきました。

1つ目は、「新しさ」による興味喚起です。
閲読理由の自由回答では、「最新」「最先端」「新しい情報」「トレンド」といったキーワードが多く見られました。読者は単なる情報収集ではなく、「知らなかったことを知りたい」という動機で訪れており、もともと関心の高い状態でコンテンツに接触していることがうかがえます。

2つ目は、信頼できる情報として受け入れられていることです。
「参考になる」「情報が豊富」「分かりやすい」といった評価に加え、「本誌」「ブランド力」「専門家」など、媒体への信頼やリスペクトを示すキーワードも多く見受けられました。

3つ目は、自分ゴト化から行動意欲につながっている点です。
コスメ・美容領域の自由回答では、「自分向き」「試してみたい」「きれいになりたい」といった言葉が多く挙がりました。読者は情報を理解するだけでなく、「自分にとってどうか」という視点でコンテンツに接していることが分かります。

この結果は、出版社Webメディアが単に情報を届ける場ではなく、読者の理解や共感を促し、行動変容まで導く力を持つことを示しています。

後編は7月中旬掲載予定です。

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