マーケティングプロセスの脱炭素化のための未来のスタンダードをここから

公開日 2026年08月10日
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株式会社電通 サステナビリティ・コンサルティング室 エグゼクティブ・プランニング・ディレクター (電通Team SDGs リーダー SDGsコンサルタント)

竹嶋 理恵

電通入社以来、マーケティングやストラテジックプランニング、PRの部署でストラテジーからキャンペーン構築、ウェブサイトやイベント、店舗開発等まで様々なジャンルの商品やサービスのコンサルティングやプランニングに携わる。
現在は企業やメディア、スポーツなどのコンテンツのサステナビリティ起点での事業戦略策定や事業変革支援、コミュニケーションを担当。また、広告業界やメディア業界のマーケティングプロセスの脱炭素化にも取り組む。

株式会社電通/電通グループ ストラテジック・プランナー

井上 佳苗

入社以来、官公庁や民間企業の広報戦略、コミュニケーション戦略、ブランド戦略立案を担当。マーケティングを起点としたコミュニケーションプランニングを行う。
2025年からは、(株)電通グループに出向し、経営直下のグローバルチームのプランナーとして、電通グループのサステナ経営や広告業界全体の脱炭素化に向け、他広告会社やテレビ局、新聞社、デジタルプラットフォーマーなどと共同でルールメイキングを推進している。

地球沸騰化時代に広告会社はどんな貢献ができるのか?

今年もとんでもなく暑い夏がやってきました。国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化時代の到来」と発言したのは記憶に新しいですが、気候変動への対応はまさに待ったなしの状況で、企業の事業も私たちのくらしも変革を余儀なくされています。
日本政府が 2050 年までにカーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現を目標に掲げる中、広告主である企業のみなさまは経営レベルで脱炭素に向けて力強く取り組んでいらっしゃると思います。そして大きな転機として、2027 年以降は時価総額 3 兆円規模の企業を対象に Scope3排出量の開示が求められる予定になっており、企業はその対応を迫られます。

そんな中、広告会社ができることは何なのか?
一見すると、広告業界は脱炭素とは遠い領域にあると思われがちです。しかし多くの企業がサプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を管理・削減する「Scope3」への対応を進めており、広告活動もこの Scope3 に該当します。
私たち電通グループが企業のみなさまに提供しているマーケティングのためのソリューション(広告・コンテンツ制作/広告出稿/イベント/空間設計/グッズ/キャンペーン等)はSCOPE3の中のカテゴリー1に位置付けられます

したがって、私たち電通グループは企業のみなさまに質の高い効果的なソリューションを提供するとともに、そのソリューションそのものも企業のみなさまが取り組む脱炭素化に貢献するべきであると考えました。

電通グループによる新たな脱炭素ソリューション

そこで私たち電通グループが発表(2026年8月5日リリース)したのが、電通グループによるマーケティングの制作・運用プロセスにおける脱炭素ソリューション「MIRAI STANDARD SWITCH」です。

私たち広告会社が提供している広告やコンテンツ、イベント、キャンペーンなどは人の心を動かし、社会を動かしていく力を持つものだと信じています。そしてそれらを企業やブランドを体現するものとして発信していく企業のコミュニケーションも同様だと考えています。

だからこそ、私たちはその制作プロセスにおいて未来の脱炭素社会の実現のために環境に配慮した新たなスタンダードを作りたいと考えました。そして、そのような広告やコンテンツやイベントなどにたくさんの人が触れてくれることで、人々の意識や行動、そしてその先の社会を変えていけるのではないかと考えています。

なぜ電通グループが今、これに取り組むのか?

サステナビリティや脱炭素社会の実現という壮大な課題においては、ひとつの正解や完成形があるわけではありません。志を同じくした仲間と、ともに動き続けていかなくてはなりません。
したがって電通は広告やメディア業界の未来、としてその先にある社会全体の健全な発展のために、できるだけ早く、まずはできることから動き出そうと考えました。

このMIRAI STANDARD SWITCHは現段階で完成しているものではありません。まさにここをスタートに広告やメディア業界、そして企業のみなさまと一緒に育てていくものだと考えています。脱炭素というと、ともすると難しかったり、やらねばならないものという義務感が強いかもしれませんが、脱炭素社会の実現のために仲間とともに一緒にワクワクしながら未来の新しいスタンダードを作るということに挑戦したいと考えています。

電通グループの脱炭素ソリューションの全体像

電通グループがご提供する脱炭素ソリューションの全体像は以下の通りです。

大きくは3つの柱で展開していきます。

1つめは、電通が2023年10月末にリリースさせていただいたDIM(Decarbonization Initiative for Marketing)が目指すところでもありますが、広告やメディアなどの業界全体でこのような取り組みをしていこうという意識啓発と仲間づくりです。これらは電通1社でできるものではないと考えています。広告やメディア業界全体で取り組むべきことであり、もちろん企業のみなさまとともに取り組むことであると考えています。そのためにまずは、取り組みの意義や目的についてみなさんと共有し、同じ志を持って、一緒に取り組んでいく土壌を作ることを目指しています。日本広告業協会(JAAA)での活動において 2024 年に脱炭素研究会を発足し、2026 年には正式に委員会となりました。さらに制作業界やイベント業界など業界間での連携をとって、活動を広めています。

2つめは、業界標準となるカリキュレーターの開発と運用ルールの開発です。脱炭素の取り組みにおいてはまずはCO2排出量の現状を把握することがスタートになります。こちらは領域別に業界標準となるカリキュレーターを作っています。そして電通ではすでに広告や長尺コンテンツやイベントの制作プロセスでのCO2排出量の可視化の取り組みの実績を積み重ねています。実測値(1 次データ)で測ることで制作における CO2 の排出量が 9 割減になることもあり、正しい算定と対応には非常に大きな意義があります。 企業のみなさんの脱炭素化目標やカーボンオフセットの費用にも大きく関わってきます。

最後に3つ目の柱となるのか先ほどご説明した電通グループの脱炭素ソリューション「MIRAI STANDARD SWITCH」です。こちらはカリキュレーターでCO2排出量の実態を把握した上で、制作の各プロセスでGHG削減を実施していくソリューションであり、それに取り組んでいくムーブメントのことを指します。

現段階では以下の5つの領域でGHG削減とそれにまつわるソリューションをご提供していきます。

MIRAI STANDARD SWITCHの概要

1.コンテンツ制作領域

まずは広告やWEB動画、ドラマや映画などの長尺コンテンツの制作プロセスにおけるソリューションです。こちらは電通クリエイティブピクチャーズが中心になって推進しています。CCCP(Carbon Calculator for Content Production)で各プロセスでのCO2排出量の可視化をベースにしながら、制作時のCO2を削減するソリューションです。

バーチャルプロダクションの導入/生成AIの活用

遠隔地に大人数でロケや大型の美術セットの製作なく、背景制作などに生成AIを活用し、制作期間の短縮とCO2大幅削減とともにスケールやクオリティを向上。

バーチャルプロダクションも可能なFACTORY ANZEN STUDIO

国内初の資源循環型運営を実践する、再生可能エネルギー100%の電力で運用する次世代撮影スタジオ。(横浜市鶴見区)バーチャルプロダクションも導入。

サステナビリティプロダクションサービス

制作現場における専門スタッフによる現場での脱炭素アクション(ゴミ分別・脱プラ・ケータリングなど)の実行・実働サポート。ご要望に応じて削減ガイドライン「グリーン制作ガイド」も策定。

2.イベント制作領域

イベント業界共通のカリキュレーターECS(Event Carbon Simulator )とともにに、電通ライブが独自に制作したサステナブルイベントガイドラインをもとに電通ライブが中心になって推進しています。

サステナブルな会場選択

VENUE LINKを活用した再エネ導入/資源循環施策を実施している会場の提案。

環境に配慮したブースや内装のデザインや空間プロデュース

脱炭素やリユース、資源循環を前提とした内装デザインや空間プロデュース。

脱炭素に貢献するイベントオペレーション

EV車量の導入やリサイクルステーション設置やゴミ拾いツアーなどイベントの来場者も巻き込んだオペレーション。

3. グッズ・キャンペーン制作領域

グッズやキャンぺーンの制作領域においては、電通プロモーションが中心になって推進しています。

印刷領域

環境に配慮した素材や加工方法で販促ツールやPOP・ディスプレイなどの開発や製作。(EX. danbal:環境負荷低減を意識した段ボール製のプロダクトブランド)

販促領域

環境に配慮した素材や加工方法でプレミアム・ノベルティーの開発・製作やアップサイクル等のスキーム提案。

フルフィルメント領域

環境に配慮した梱包資材やカーボンニュートラルな配送、輸送距離を最短化するロジスティクス設計。

4. メディア出稿領域

制作した広告を様々なメディアにおいて出稿するプロセスにおけるCO2排出量の可視化と削減のソリューションで、電通と電通デジタルが中心になって推進しています。

デジタルメディア出稿の削減ソリューション

独自のストリーミング技術で転送量を大幅削減するSeenThisを活用したデジタル広告出稿。脱炭素への貢献とともに、広告効果の最大化とコスト優位性を実現。

マスメディアについては現在メディア各社と検討中

5. コミュニケーション領域

マーケティングプロセスの脱炭素の取り組みを強力なファクトとして、社内啓発とともに企業価値向上と新たなビジネス機会の創出のためのコミュニケーション活動。電通が中心になって推進していきます。

事前の社内やスタッフへの啓発

社内や制作や運用の現場のスタッフへの理解とモチベーションをためるための事前のレクチャーを効果的に実施。

事後の社内外への取り組みについての情報発信

取り組みをファクトとして、事後にリリースやPR、広告展開などで積極的に情報発信。
あわせて、環境配慮型の新たなスポンサーや連携先を集める仕組み等の開発。

これまでの実績

制作プロセスの脱炭素化についてはすでにいくつかの導入事例があります。

例えば広告制作だとM&Aキャピタルパートナーズや森永乳業の「マウントレーニア」などのテレビCM、そしてドラマだとNHKの大河ドラマ「べらぼう(2025年度)」、映画だとAmazon MGM Studiosの「Broken Rage」や「沈黙の艦隊シリーズ」など。カリキュレーターで制作プロセスのCO2排出量を精緻化することで、排出量の総量が減るのはもちろん、バーチャルプロダクションなどの導入により、遠隔地の長期にわたるロケが不要となり、働き方改革にもつながったという声もありました。雑誌の領域ではハースト婦人画報社と「婦人画報」「ELLE Japon」のコンテンツ制作プロセスの全工程のCO2排出量・削減評価を行いました。
またイベントだと、昨年の大阪万博のタイミングで開催されたEXPO EKIDENにおいてイベント全体の脱炭素を含めたサステナビリティの取り組み方をまとめた「サステナビリティイベントガイドライン」を策定し、取り組みの宣言からCO2排出量の算出と削減アクション、オフセット、そして事後の情報発信まで一気通貫で支援させていただいた事例もあります。イベントのように多くの人が携わるものには、スタッフなどの関係者はもちろん来場者など広くその取り組みについて伝えて、協力していただく必要がありますが、そうすることでこの取り組みが企業価値を高め、イベントをきっかけに社会を動かしていくことにつながっていくと考えます。

どうやってMIRAI STANDARD SWITCHを導入するのか

事前のコンサル>導入前準備>削減ソリューションの実施とCO2排出量の測定>結果をもとにしたコミュニケーションという4段階で考えていきます。
まずは各社さまがマーケティングにおいて広告やイベントなど何を実施しようと考えているのか、そして現在のCO2排出量のシミュレーションをもとに、どんな削減アクションができるかについてコンサルをします。方針が決まったら、ガイドラインを作成し、社内やチームのみなさまへの啓発や事前レクをして、導入準備をします。そして、実際の制作や運用の場面でMIRAI STANDARD SWITCHを導入してCO2を削減し、最終的なCO2排出量を算定します。最後に、MIRAI STANDARD SWITCHを活用した取り組みと削減結果について、様々な形で社内外に情報発信をしていきます。CO2削減努力はなかなか表には見えにくいものなので、具体的な取り組みやその成果についてきちんと公表していくことが重要で、そのことで企業価値を高めるだけでなく、社会の意識や行動変革に貢献していきます。

最後に

これまで広告会社が脱炭素社会の実現にどう貢献できるかについてMIRAI STANDARD SWITCHの紹介とともに話をしてきました。MIRAI STANDARD SWITCHは私たち広告会社がマーケティングに関するソリューションを提供する企業のみなさまだけに向けたものではありません。スポーツや音楽などのコンテンツを作り、興行していらっしゃるみなさまも、その存在価値を示し、社会がよくなっていくことに貢献していくことがこれからは求められます。そして、企業が協賛したり、連携したりすることで、スポーツや音楽などもサプライチェーンの一員となります。したがって、脱炭素への取り組みはすべての人にとって必要な取り組みになるはずですし、取り組むことできっと社会をいい方向に変えられると信じています。

最後にもう一度お伝えしますが、MIRAI STANDARD SWITCHは完成したソリューションではありません。まだまだ足りないものや開発中のものもたくさんあります。これをきっかけにみなさんと一緒に作っていく、いわばプラットフォームです。

ぜひ仲間になってください。そして未来のスタンダードを一緒に育ててください。

問い合わせ先

株式会社電通グループ グループサステナビリティオフィス
Email:sustainability@dc1.dentsu.co.jp

株式会社電通 サステナビリティコンサルティング室
Email:sus.consult@dentsu.co.jp

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