電通メディアイノベーションラボ メディアイノベーション研究部長
長谷川 想
日本電信電話(NTT)にて、主に情報メディアサービスの開発・運用などに従事後、電通入社。
メディアプランニング、デジタルマーケティングなどを主に担当後、現職。
情報行動、メディアビジネス、ローカルメディアなどに関心がある。
学際情報学修士課程修了。日本マーケティング協会マーケティング・マイスター。
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プロモーションメディア広告費
先ほど7つ挙げた合算のプロモーションメディア広告費は前年比2.0%増の1兆7,184億円でテレビメディア広告費とほぼ同じ規模です。
屋外広告
前年比105.3%です。人流が回復していることと、OOH広告のプログラマティック化による出稿拡大が寄与しているでしょうか。またOOHメジャメント協会が設立され、2026年3月から一部媒体を皮切りにOOH広告のリーチの指標が、インプレッション単位で出る取り組みも始まっています。説明責任を果たしながらプランニングに役に立つ仕様が進化していくことでしょう。
交通広告
人流の回復とともに拡張しています。大都市型のメディアです。タクシーは、2024年は減少しましたが2025年は増えたと聞いています。新宿、渋谷の再開発が進み、新しい媒体メニューがどんどん出てくる見込みで、今後も増加が期待できると思います。
折込広告
2,354億円、前年比96.4%です。資源高、物流コストの拡大で紙媒体は厳しい風が吹いていますが、一方で高齢者向け商品訴求需要や2025年は参議院選挙需要があり、比較的減少幅を抑えられた印象です。
DM
2,708億円、前年比94.6%です。昨年は郵便料金の大幅値上げが10月にあり、その影響もあってか減少しています。
フリーペーパー
1,056億円、前年比80.9%。昨年、大型メディアの廃刊、デジタル移行もあり、大きく減少しました。
POP
人流の回復とともにリアル店舗への注目が集まり、もしくはこれから進むと思われる各種リテールメディアとの融合なども踏まえ、拡張傾向にあり、1,540億円、対前年比103.8%です。
イベント・展示・映像ほか
4,748億円、111.2%と2桁成長を達成しています。大阪・関西万博の影響や大型商業施設などの開業に合わせた拡大が確認できます。デジタルツールとの融合によるソリューションも出てきて今後も拡張していく領域と考えています。シネアドは実写版の最高記録を更新した映画も出て、活況を呈していると聞いています。
インターネット広告費
インターネット広告全体で4兆円を超え、うちインターネット広告媒体費が3兆3,093億円で8割を超えています。うちマス四媒体由来のデジタル広告費が1,651億円、インターネット広告費全体に対して4.1%です。
インターネット広告費全体では前年比110.8%、広告媒体費に限ると111.8%です。新聞デジタル97.9%、雑誌デジタル96.5%で前年比減少、ラジオデジタル111.8%、テレビデジタル123.4%でいずれも前年比増です。
インターネット広告費(2023~2025年)
生成AIの影響でゼロクリックやAIオーバービューといった動きがあり、媒体社のサイトのアクセス数が減っているとも聞きます。ヴァリューズさんのデータを紹介した日経の記事でも同様の言及がありました。新聞や雑誌のデジタル広告費の減少はトラフィックが減ったことが大きく影響して減少しているのではないでしょうか。
一方、ラジオデジタルは増加、テレビメディアデジタルも大きく成長しています。
ECモール内に出店している企業の物販系ECプラットフォーム広告費は二桁成長です。一方、インターネット広告制作費については媒体ほどの成長がなかったですが、104.0%になりました。
物販系ECプラットフォームについて、広告主が物販系ECプラットフォームに出店している「店舗あり事業者」で、その店舗内に出稿するものは、「物販系ECプラットフォーム広告費」として切り出して推計しています。2025年は2,444億円でした。それ以外、残りの3象限のものはインターネット広告媒体費に含まれます。
よくリテールメディアの問い合わせをいただきます。当社ではなくCARTA HOLDINGSによる推計で、2025年はリテールメディア全体で6,000億円を超えました。EC事業者が5,236億円、店舗事業者が830億円です。店舗事業者の中では店舗内のデジタルサイネージも徐々に拡大傾向にあり、今後も成長基調にあると、同社が伝えています。
インターネット広告制作費の2025年の動向は、インターネット広告媒体費ほどの成長はありませんでした。多くの予算をかけた素材と、AIを使って廉価で作る素材とに二極化している話もよく聞きます。低コストで作られる動画が増え、広告媒体費ほどは伸びず、前年比104%というところでした。
インターネット広告費:詳細分析
インターネット広告媒体費についての分析は、2つの切り口で行っています。
一つはディスプレイ、ビデオ(動画)、検索などの広告種別による切り方。もう一つは、運用型、予約型という取引手法別。この2つの切り口で、インターネット広告媒体費を推計しています。
広告種別での前年比は、ビデオが2024年の121.8%、ディスプレイが110.4%、検索連動が107.4%でした。
生成AIが進化し、検索行動や検索連動型広告は今後どうなるのかというところに注目が集まっていますが、広告費で見る限り今のところそれほど影響を受けていません。ただし、注視しなければならないところです。アメリカの話ですが、昨年、オープンAI社が生成AI広告を実験的に始めて、一定の収益が確保できたと発表していました。これから新たな生成AI広告が普及する可能性も大いにあり得ます。
一方の取引手法別では、ターゲティング可能な、柔軟な出稿可能な運用型広告がメインになっています。前年比112.5%です。
そしてビデオ動画広告市場についてです。インストリーム広告は動画共有サイト内に流れるような広告です。一方、アウトストリーム広告はSNS上のタイムラインに出るような広告です。半々ぐらいの傾向かと思います。
ビデオ広告も1兆円を超えた、というのが2025年の大きなトピックになっています。8兆円の総広告費で4兆円のインターネット広告。その中の1兆円が動画広告。おおよその配分比と思います。
ソーシャル広告市場
ソーシャルメディア広告を分析してみました。これまでとは切り口は変わっています。
動画共有サイトもソーシャルと位置づけます。
全インターネット広告媒体費の4割弱ぐらいをソーシャル広告が占めています。さらにその内訳は、SNS系42.1%、動画共有系39.2%、その他(ブログなど)18.6%。
少し話が逸れますが、以下がXやインスタグラムが世代別でこれぐらい使われているという総務省のデータです。
Xは全世代で50%。60代の2割以上が使っています。インスタグラムも60代で3分の1ぐらいが使っています。こういったメディアが若年層のものという「常識」が覆されていく傾向があると思います。私も驚きましたが、TikTokは60代の20%ぐらいが使っています。
一方、インドネシア、オーストラリアでは未成年のSNS利用制限の報道もありました。スペインも検討中と聞きます。EUの様々な規制の中でデジタルサービスアクト(DSA)は未成年と明らかに分かっている場合に行動データに基づいてターゲティングをしてはいけないというルールがあります。そういった動きが日本にも出てくる可能性もあり、また法的には問題ないが道義的にどうかという声が上がってくる可能性もあります。未成年へのアプローチがSNS系頼みになっていれば、代替手段を考えることも必要かと思います。
そして、2026年のインターネット広告費、媒体費の予測としては108.3%の成長を見込んでいます。
インターネット広告媒体費全体額の推移(予測)
これからの展望・注目ポイント
(1)2026年3月、OOHの新しい広告効果に関するデータ提供が始まりました。広告全体のカレンシーが、%からimp、viewなどの人数/デバイス単位などへさらにシフトする可能性があります。
(2)AIを活用した購買プロセスの自動化やリテールメディアの拡大や標準化が進んでいくでしょうか。ブランドをいったん認知して検討するというプロセスが端折られて、生成AIの提案によってあまりブランドを知覚せずに購買に至るのではないかという予測もあります。アメリカのあるECサイトのトラフィックの流入経路としての生成AIが大きく増加したというデータもあるとのこと。2~3年先、購買プロセスの大きな変容があり得ると思われます。
(3)2026年は大型スポーツ案件があります。今後そうした大型の音楽・スポーツ等のイベントも配信で視聴することになる可能性も大いにありうるでしょう。
(4)SNSは若者のものというのは考え直す必要があり、中高年層にも広く浸透しています。SNS規制というと日本は、誹謗中傷対策に関する議論は若干進んでいるように思われますが、ターゲティング広告配信の相手としての未成年は、一挙に規制が進む可能性もあります。未成年に対するアプローチが必要な会社は何らか代替を持つ、もしくはそれに備えることも必要かと考えます。
世界の広告費
DI(電通インターナショナル)として世界の広告費を発表し、我々チームも協力しています。日本の広告市場は2026年、2.9%成長するのではないかというところです。
昨今、国際情勢は不安定要因も多くありますので、予測が大変困難でもあります。
APEC(日本を含む)、アメリカ、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、それぞれ成長率を予測しています。なかなか読みづらいところは、ご承知の通りです。
日本の広告費:関連コンテンツ
「2025年 日本の広告費」解説をウェブ電通報に記載しています。
https://dentsu-ho.com/articles/9645
CARTA HOLDINGSの高松さんと当社の森永によるインタビュー形式の記事です。毎年アクセスが高く、クッキー規制どうなるという話や今後のメディアの見通しも含めて記事化しています。
そのほかにもさまざまなコンテンツがあります。ぜひご覧ください。
・PowerBIによる情報提供
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/index.html
・1分くらいでわかる!日本の広告費2025
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2025/
・日本の広告費 2025詳細分析PDF
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2025/pdf/koukokuhi_2025.pdf